ご挨拶
御 挨 拶
 能・歌舞伎・文楽は日本を代表する古典芸能です。この三者はいずれも音楽と演劇という舞台芸術の二大要素を兼ね備えていることから「楽劇(ガクゲキ)」と呼ばれますが、これらはその高度な芸術的内容のゆえに世界的に高い評価を得ていることも周知のところです。
 関西楽劇フェスティバル協議会では21世紀を迎えたいま、これら世界的レベルの芸術的価値を有する三大楽劇を中心に据えたフェスティバルを開催し、それらの古典的価値を再認識する一方で、それをふまえて新しい現代の芸術文化を創造していくことを目指しています。そして、このような芸術活動にともなって湧き起こるエネルギーを用いて社会を活性化させ、そうした文化的昂揚の中で、関西の復権と日本の再生とを実現していくことが、この運動のより大きな課題でもあります。
 このフェスティバルは関西の地を舞台にして行われます。この催しが関西の地で行われるのは、これら三大楽劇の淵源がいずれもこの地にあるからに他なりません。すなわち、能楽は奈良春日神社・興福寺の神事に携わった中世の申楽(大和四座申楽)に始まり、歌舞伎は近世初頭の慶長8(1603)年に、出雲の阿国が京都鴨川河原で女性による舞踊劇を演じたことに起源を有しています。また、文楽は元禄時代に大坂道頓堀において、竹本義太夫、近松門左衛門、竹田出雲の三者によって義太夫人形浄瑠璃を興行として確立したところから出発しています。
 わたしどもの試みは、このような関西という土地の利を活かしながら、芸術、芸能をその生成の場に立ち返って、原点からとらえ直していこうとする見地に立っています。
 本年は「楽劇の祭典」の十周年にあたります。2001年から始められたこの催しも、早10年の歳月を経るにいたりました。これ偏に皆様方の御愛顧と御支援の賜と、心から厚く御礼を申し上げる次第です。

 さてこの十周年を記念しまして、来る2011年4月23日(土)に楽劇『保元物語―崇徳怨霊譚』を上演する予定でいます。
 日本の12世紀、保元の乱で敗れて四国松山の地に流された崇徳上皇が、この世に恨みを抱いたまま彼の地で没した。それから数年後、崇徳の墓を訪ねた西行法師の前に崇徳の怨霊は現れ出で、それより両者の間で壮絶な対決が繰り広げられる。
 これが崇徳怨霊譚として世に知られるものですが、今回の公演では、全体を能の伝統的な様式で構成しながら、音楽面では西洋管弦楽との統合がなされ、表現面では保元の乱の合戦シーンなどにはオペラの表現法が存分に取り入れられています。日本の能楽と西洋オペラとを統合した新しい楽劇世界の創出を目指した作品です。
 当協議会が総力を結集して制作に邁進しつつある本公演にふるって御参集くださいますよう、みなさま方の御来駕を心からお待ち申し上げています。

  2010年12月1日
関西楽劇フェスティバル協議会
会長  山 折 哲 雄
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